設計製図の教官たちがガイダンスの間中しつこく言ってたので、タイトルにしてみました。
「自慢じゃないけど……いや、自慢になっちゃうのかな、とにかく私たちの時代は『大変だ』っていう暇もないほど大変で……金曜日はいつも三日寝てないとか……」
気持ちは分かりますし、学生にさんざん「大変だ」って言われて苛々してるんでしょうが、もはや
老人の繰り言の様相を呈していました。(笑)
金曜一限、環境設備デザイン序論。
オムニバスだし講義中の小テストだけで成績が決まるので、あまり復習の必要はないんですが、これで一週間分が終わりだし簡単に書いておきます。今後のためってことで。
まず、
地球温暖化の話です。
地球は確実に温暖化していて、地球温暖化対策は世界の政治課題となっています。
日本も京都議定書を採択しました。
具体的に考えてみると、日本で排出される温室効果ガスは9割がエネルギー起源(燃料を燃やした時に出る、ということです)の二酸化炭素です。
その3分の2は産業由来ですが、残りの3分の1は住宅・建築関連です。建設とか運用エネルギーとか。
でも、地球環境・建築憲章も制定されたことだし、21世紀の建築は
「長寿命・自然との共生・省エネ(エクセルギー!)・省資源・循環・継承」で行こうと。
じゃあ、
住宅の省エネ対策はどうしたらいいかってことなんですが、世界的には住宅のエネルギー消費としては暖房と給湯が圧倒的に多いので、基本は「熱を効率よく作る。または太陽光や熱など自然エネルギーを活用する。そして
作った熱を逃がさない」ということです。
つまり、住宅の断熱化が大事だと。ただ、日本の住宅は伝統的に風が通るように開口が大きく、また日射しを避けるようになっているので、両方を兼ねるようにするのがいいだろうと。
(これは私見ですけど、日本は湿度が高いし、開口が大きいのも理に適ってると思います)
脳卒中が死因として大きいのからしても、日本の住居は冬は寒すぎます。
よって省エネ対策としては、
●外皮のパッシブデザイン
●大気の熱を利用する、エコキュート(ヒートポンプ)
●廃熱利用
などがあげられます。
憲章のほかの項目については、たとえば省資源なら
●建設廃棄物のリサイクル
長寿命は
●SI(スケルトンこと内装と、インフィルこと設備の分離)
継承は
●古民家の断熱再生
などが行われています。
あとはおもに省エネ建築の具体例でした。1990年代以降は、パッシブ手法(風や光を自分で作らず、外の自然から採る)やさまざまな省エネ機器の発達などがみられるようになります。
●大林組技術研究所本館(1985)
ダブルスキン(パッシブ手法の一種)の利用。
●新潟県庁舎(1987)
光庭があるため、自然通風が可能になっています。
プリントには書いてませんが、当然採光もできると思います。
●三井倉庫箱崎ビル(1991)
日本で初めて本格的に河川熱を利用しました。
河川熱もヒートポンプと似たような原理のようで、熱を
低温から高温へとくみあげます。
●生活工房・サッポロファクトリー(1995)
名前の通り札幌にありますが、つねに20度前後のアトリウム(ガラス張りの前庭)を実現しています。
原理はちょっと分からないんですが、下層に床暖房と冷暖房、中層に熱緩衝空間があるそうです。
●東京電力技術開発タワー(1997)
環境をコントロールするエンベロープ(覆い)。
●アースポート(東京ガス港北NTビル)(1997)
アトリウム(ここではエコロジカル・コアと言ってます)による自然通風と採光。
うーん……ビルって無彩色のガラスとコンクリと鉄だけでできてて、勝負は形と風と光って感じじゃないですか?シンプルでかっこいいといえばそうなんですが、どうも薄味というか、ずっと見てるとつまんない気がします。中からだとそうでもないですけど。
●明治大学リバティタワー(2001)
あーこれ聞いたことあります。これが使ってみたくて理工学部に入った人がいて、校舎が違って使う機会がなかったっていう話なんですが。
壁面に空いた風穴による自然通風が特色です。
●北海道立北方建築総合研究所(2003)
高断熱、自然採光、自然通風。……もう飽きましたよこれ!!
●糸満市庁舎(2003)
亜熱帯における遮熱・太陽光発電・通風の外皮デザイン。糸満市は沖縄県なので。サッポロファクトリーとは対照的です。
●マブチモーター(2007)
季節応答型ダブルスキン。
レンガを多用した長寿命の建物です。
いいじゃん、と調べてみたらレンガは
施工の大変さから敬遠されるんだとか。そういう理由だったんですね。
●オーク東京ビル
省エネルギーを実現した改修の例。
あとは、海外や日本の環境共生住宅、ドイツのパッシブハウス、日本の省エネ住宅、ゼロエネルギーハウスの話を聞いておしまいでした。
午後はガイダンスだったんで、今週の講義録は以上です!